人にはその人の「リズム」があるらしい。
とある書店の女主人は、変わった「リズム」の持ち主。
私がどんなに急いていても、まるで宇宙遊泳のごと、独特のたゆたうような「リズム」で会計は進むから、たちまちこちらの「リズム」は狂わされる。
彼女の「リズム」に、接客マニュアルなどあったものではない。いや、マニュアルで身につく技術ではない。
「リズム」の狂いを元に戻せ? そう訴求したい? まあ、とにかく今、私は本をあがないに来た者だ。直近の目的を果たすため、いったん主導権は握らせてしまった。なれば、向こうさまに身を任せるが早かろう。
そうして私はあきらめる。
だが、いったん彼女の「リズム」に乗ってしまえば、忘れかけていたことが始まる。
目当ての本が代金でもって私の所有物となる、という単なる客観的事実よりも、もっとダイナミックなこと。
大げさな言い様かもしれない。と、同時に大げさではないかもしれない。
本の世界の巨大な律動が始まるのだ。
女主人の「リズム」は、本の世界の「リズム」だった。
そのリズムで重き扉を、ノックする。これは儀式だ。
果たして、未知なる世界の扉は、開かれん。
ギギ、ギギギギィ・・・・・・
こうして、ようやく、私は一読者足り得る。
読書とは、それほどのこと。
そんな気がします。なんとなく。
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